第1章 プロローグ
周囲は沢山のお祭り客で溢れかえっていた。
お祭りの前夜祭、本番の明日は彼氏とココに来るのかと考えて一人浮かれていた。
友人達と会場を回りながら明日はココに来てみようなんて考えながら屋台を見て回る時間も幸せだった。
「それにしても、人多いな今年」
「あー、あれじゃない?ジャニーズのコンサートがあっこのアリーナであるから」
「マジで?うはっ、それでこの女子の多さか、納得した」
言われて改めて見れば確かに例年より人は多い、それも女子の数が圧倒的に違う。
アイドルって凄いなぁなんて思いながら近くにあった、りんご飴の店を見て足を止める。
美味しそうなソレを見て思わず店のほうへと寄る。
「いらっしゃい、どれにしましょう?」
「えっ!?えっと・・・じゃあ、小さいのと大きいの1つずつ下さい」
「まいど!」
大きい方は持って帰って食べようなんて思いながら振り返れば先程までいた友人の姿が見当たらなかった。
ヤバイッと思い周囲をキョロキョロ見渡すが人が多すぎて見つからない。
巾着の中から取り出した携帯を鳴らしてみるけど出る気配がない。
途方にくれていると人並みに流される。
混雑した道の中でボーッと立っていれば邪魔になるのは当然で気が付くと神社の近くに立っていた。
人気の無い場所、普段なら思わずゾッとしてしまうだろう場所だけど今は、近くの祭りの音と光があるせいか不思議で恐怖は感じなかった。
少し疲れた身体を休ませようと縁側に腰掛ける。
きっと着信に気が付いたら折り返しの連絡が来るだろうとそれまで待とうと先程買ったりんご飴を袋から取り出す。
ガリッとワインレッドの飴を齧る。
独特の甘さ。
だけどそれが祭りならではの味な気がした。
「ごめん……え?なに?……聞こえな……切れた?はぁ」
不意に聞こえてきた人の話声にりんご飴から視線を上げた。
困った様子で自分の携帯を持っている人は首をポリポリと掻きながら溜息をつくと携帯をポケットの中へとしまった。
「あー……眠い……腹減ったぁ……」
いや、どっち?と思わず突っ込みを入れたくなるような事言っている男の人は不意にこちらを見た。
黒い帽子と眼鏡をして白いシャツの上に黒い服を重ねて下はジーパン。
普通の格好なのに、凄く似合って見えた。