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【跡部】All′s fair in Love&War

第33章 おわりのそのまえに(後編)





「あの、ジロちゃん、私っ…ね、」



俺の胸に頬をつけて。話がある、と切り出してからもう随分長い間、それまでの熱を冷ますように、深呼吸を続けていた守河がか細い声で話し出した。一言一句聞き漏らしたくない、と耳を澄ます。

泣きそうにも聞こえる声は珍しくて、どうしたのだろう、と心配になるが。ぎゅ、と握り拳の形をした手には力が込められていて、余程大事な事を口にするのだろう、と邪魔を入れるのが怖く、黙って聞くことにする。


「私、ね。ジロちゃんの事が、好きなの」
「…うん、知ってるー」


守河の言葉に、わざと軽く答える。何度となく言われた好き、という言葉には、いつも言外の意味が含まれている――男の子の中で、だとか、松元の次に、だとか。

他の男子とは格別に違う扱いをされている事くらい、承知の上で、いつだってそれ以上を求めているんだ。そんな事守河には言えるはずなくて、ずるずると。松元の後ろにこの気持ちを隠して、でも隠し続けるのは嫌で、跡部の恋が早く成就するよう願っている。


こんな自分が弱くて狡くて、本当に嫌になる――


その時、ふるふると、守河が首を振った。どうしたの、と声をかけると。守河が上体をゆっくりと起こした。裸の上半身が、ベッドライトだけが光る暗闇の中、ぼおっと白く発光して見える。絶景だなぁ、なんて思いながら、腰を支えてあげる。


「違うの、ジロちゃんの好き、とは違う」


ぽたり、と雫が降ってきた。


「守河、」
「ジロちゃんは、私が、ジロちゃんの事、友達として好きだと思ってるでしょ?」


とうとう泣き出した守河に驚いて、名前を呼ぶ。続けられた言葉に何を言うのだろう、と驚く。


「え、ちがう、の?」
「違うっ…ほんとはもう、ずっと前から、そうじゃないの」


違う、の意味が沢山ありすぎて、困惑する。もう好きじゃない、の?それとも好きだけど、友達として好き、じゃないの?そんな都合の良い解釈して、いいの?



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