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【跡部】All′s fair in Love&War

第31章 おわりのそのまえに(前編)




俺は、守河に甘い。それは、出会った時から変わらない。だって俺は守河の事が好きで好きで、大好きで。彼女が望むことは何だって叶えたい、と本気で思っているから。


それでも、流石にそれは無いんじゃないか、なんて。半ば回っていない頭で考える――


「…あの、ね、ジロちゃん…っ、聞いて欲しい事が、あるのっ」


そう、少し涙ぐんだ声で必死に訴える守河が何処に居るかと言うと、文字通り、俺の上。俺の物が刺さった状態。一通りの前戯を終えて、挿入して、いざ!って時に。いやいや、さっきまで可愛くよがってたのに!なんて言えるはずもなく。

守河は熱を逃そうとするように、はぁ、と息を吐き、身体を倒す。そしてぴたり、と俺の胸に頬をつけた。逆に、そんな一挙一動に俺の熱はどんどん煽られていく。正直、守河が呼吸してる、その浅いお腹の動きですらやばいのに。ふるふると首を振って、答える――


「…なに、守河」


そんな俺の必死に絞り出した応えに、守河はにっこりと微笑む。やはり俺は彼女に甘くて。守河の頼みなら、今までどんな眠気も我慢してきた。読みかけのジャンプを脇に置いてでも、話を聞いてきた。

今日もそうだ、泣いている松元を家まで一緒に送って。流石に守河も家に帰るかな、なんて思っていたのに…帰りたくないの、なんて可愛く誘って来るから。松元との別れに弱っている守河につけ込むつもりなんて無かったのに、なし崩しでこんな状態だ。

好きだから、俺の片思いだから。だから、誘われたら断れる訳がないんだ、なんて言い訳を頭に浮かべながら、守河を抱く。守河の表情が艶めいて行くほど、彼女の顔にありありと浮かんでいた寂しさが薄れていく事が嬉しくて。

例え、松元の身代わりだとしても。松元への思いの、隠れ蓑だったとしても。そんな守河の気持ちを俺も利用して、彼女と一緒にいるのだから。



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