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【跡部】All′s fair in Love&War

第30章 はじまりのつづき(後編)




そして月曜日。もうすっかり桜が散ってしまった朝の校内を、俺様は教室に向かっていた。

先週でガイダンス期間も終わった。部活動も今日から本格始動だ、授業もどんどん進んでいくだろう。辿り着いた教室の扉を開けると、いつもならわらわらと駆け寄ってくる雌猫共の姿はなく、ミカエルの手腕に満足する。


リーダー格の女が、跡部の息のかかった企業の、お偉方の家の出身だと言うことは分かっていた――と言うより、彼女が聞くまでもなく仄めかして来たのだが。それがどうした、とその時は思ったが、排除したいとなれば良い口実だった。

ミカエルに知りうる限りの情報を渡すと、あっという間に手を回したようで、俺様のファンクラブとやらは瓦解したようだ。もっとも、人の気持ちは操作できませんからね、とはミカエルの弁だが――やっと平穏な学校生活が手に入ると息をつく、が、しかし。それでは面白くない――


「よぉ、松元」


始業ぎりぎりで教室に入ってきた松元に声をかける。俺様が声をかけたことに、周りがざわめいている事には気付かないまま、少し驚いた顔でこちらを見る松元。


「あれ、あとべ、お取り巻きは?あんなにいっぱいいたのに!」
「さぁ?飽きたんじゃねーの?」
「へー、そんなもんなの?」

納得したのかしていないのか、興味が無いような素振りで自席につき、鞄を置く。そしてこちらをにやり、と笑い見上げた。


「さては、アンタが澄ましてるけど実は意地悪だって、みんなにバレちゃったんじゃないの?」


その言葉に、思わず口角が弛む。馬鹿正直で、真っ直ぐで、表側しか見ていない。裏があるかもなんて、思いもしない。駆け引きなんて出来そうもない、無邪気な振る舞い。でも、それが羨ましくて、眩しい。


「アーン?何言ってやがる、俺様はいつだって紳士だぜ」
「はぁ?よく言うわね」
「俺様の態度を意地悪だ、と受け取れるのは、この先お前だけだろうよ、松元」

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