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【跡部】All′s fair in Love&War

第29章 はじまりのつづき(中編)




そして放課後、コートに出てみるとまだ誰もいなかった。ギャラリーだけは一丁前に揃っていて、己の昂りに気付き苦笑する。簡単にアップをしていると、俺様に負け、正レギュラーから陥落した3年生が近寄ってきた。


「よう跡部、いいご身分だな、先輩より早くコートを使うなんて」


無視してアップを続けていると、がしっと肩を掴まれる。身長だけは無駄に高くて力が強い――骨がみしり、と音を立てたのを感じ睨みつける。


「なぁ、もう一度相手しろよ」
「…何度しても、同じ事ですよ。それに、一度負けたものは使わない、と監督も仰っていました」
「んなこと関係ないね…俺のプライドが、許さねぇんだよ!」


さらに力が込められた肩は流石に痛む。壊されてはたまらない、と勝負を受ける事を了承しコートに入る――とは言え、負ける気はしなかった。力で押す、ワンパターンな戦い方だ。


「うおー、あとべーっ!マジマジすっげー!」


ジローの声に気付き、目をやると。守河と並んでこちらを見ていることに気付く。一旦やり取りを中断すると、苛立ちを隠せないように、奴はラケットを地面に打ち付けている。これが元・正レギュラーなら、何とも無様だ。


「よお、ジロー。ソイツが言ってたマネージャーかよ」
「おつかれ、あとべっ!そーだよ、同じクラスの守河!」
「ジローがいいなら、いいんじゃねーの」


こういうのがジローの好みなのか、と目線をやると、守河はぴくり、と眉を顰めた。松元といた時とは全く違う表情に少し驚く、が、ジローのやる気に繋がるなら願ってもない。


「サンキューあとべっ!あともう一人来るんだっ、守河の友達なんだって」
「そうかよ。俺様は練習に戻るが、ジローはもう一人が来たら色々説明してやれ」



りょーかいっ!と弾んだ声を上げるジローに手を振り、コートに戻る。さらに苛立っている様子の奴から、舌打ちが聞こえてくる。


「…俺はあくまで勝負を申し込まれた側なのですが…その態度は頂けませんね、先輩」


煽るように言ってやると、興奮で顔が赤くなる。返しやすいコースでサーブを打つと、奴のリターンは何とも甘いコースを描いた。難なくボレーでそれを沈め、見せ付ける様に手を挙げると、ギャラリーがわっと沸く。それにも奴は煽られ、冷静さを欠いたやり取りが続く。

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