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【跡部】All′s fair in Love&War

第25章 アンコンディショナル・ラブ(中編)





「しかも、守河に聞いたぞ…明日出発なんて、急すぎんだろーがっ」
「誰にも言わずに行こうとするなんて、これでもう会えなくなっても、お前それでいいのかよっ」
「ん、え?ちょっと待ってがっくん、あたしの留学は一年間だよ!?」


まるで今生の別れのような口ぶりに、そう言い返すと。皆驚いたような表情を浮かべ、動きを止める。


「な、なんだよ…オレてっきり、試験に合格なんて言うから、向こうの学校に進学でもしちまうのかと」
「もー、読むならちゃんと読んできてよね!あたしが留学するのは一年間!単位互換のできる学校に行くから、来年戻ってきたらちゃんと高校二年生から皆と一緒だよっ」


宍戸や忍足にちょんちょん小突かれて、だってよー!なんて叫ぶがっくん。あぁ、これこれ。あたしの好きな、テニス部の雰囲気。それに混じって、なんだよ、たった一年かよ、なんて誰かの声が聞こえてきた。

そう、たった一年。されど、一年だ。テニス部にとっての一年間がどれだけ濃密かを、私は身をもって知っている。一年間でどれだけ心も体も変わってしまうのか、知っている。それなのに、離れてしまっていいの?

何度も自問自答した、その問がまた、ぐるぐると渦巻く。勉強をしたいのは紛れも無く、本当。跡部と一緒にいるのが辛くて逃げ出したい、その気持ちも、本当。それなのに離れ難くて、何か言ってくれるのを待っているのも、本当――その時、背後の扉が開く。見慣れた顔が覗いて、はっと息を呑む。


「おー、跡部!遅かったな」
「よぉ、何騒いでやがる」
「跡部、お前は知ってたん?松元が留学するのん」


忍足が問いかける、それに私の胸が跳ねる。なんて答えるのだろう、そんな私の緊張と裏腹に、跡部は事もなげに、あぁ、と答える――その様子に、すぅっと、体が冷えていくような感覚に陥る。


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