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【跡部】All′s fair in Love&War

第22章 一年の計は元旦にあり




とうとう動かなくなってしまった人の流れに、暫く立ち止まる。まだ拝殿までは遠く、先が思いやられる。ぐるり、と辺りを見回す跡部がふ、と目を止め。


「松元、来い」
「は!?なに、ちょっとっ…!」


人の壁をかき分けるように、参道の端に向かう跡部を必死に追いかける。なんとか壁の外に出れた、と前を改めて見るとそこは社務所だった。


「全国に行く前、お前が俺様たちに買った御守は此処の物だな」
「あぁ、うん、そーそー!ここの必勝祈願っ」


全国大会出場が決まった時、正レギュラーの皆の為に用意した「必勝祈願」の御守りはこの神社のものだ。今日も同じものが売られているらしく、懐かしく見つめる。そして、少しボロくなったそれが、まだ皆のテニスバッグについているのを私は知っている。


「お返しに、何か買ってやる。選びな」
「えっ…あとべ、知ってる?こういう所って、クレカは使えないんだよ」
「テメェ、松元…馬鹿にしてんのか?アーン?」


小銭をポケットに入れているのを知っていてからかう。臍を曲げて破談になる前に、ごめんごめん、と謝って並んだ色とりどりのお守り達を吟味する――


「あ、これ!」
「…あ?それかよ?」
「うん、この学業成就の、青!」


なんて今の私にピッタリなんだろう、と手に取る。跡部がそれを受け取り、会計を済ませると、またこちらに返してくれた。しまわれたばかりのそれを、もう一度開けてみる。珍しい、グレーがかったくすんだ青、と言うより、蒼。氷帝の色みたい、と満足して袋に戻し、カバンに入れる。


「ありがと、跡部」
「学業成就、ね。それを選ぶとは思わなかったぜ」
「流石に高校生になったら勉強もしなきゃかなー、とね!」
「今更かも知れねぇが、殊勝な心がけだな」
「今更、は余計。この御守りの力も借りて、頑張ってみるね」


私の言葉の本意を知って、跡部はどう思うんだろうか。きっと寂しがってくれるだろう、もしかしたら怒るかも。


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