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『イケメン戦国』〜生きる〜

第8章 再会


第三者目線

次の朝、光秀が天主を訪れた。

「何用だ」

「城内の警備に当たらせている者より報告がありました」

「何だ…」

「昨日、ネズミが一匹迷い込んだ様です」

その報告に信長は眉根を寄せる。
「どこのネズミだ」

「今探らせているところです。それより…」
珍しく言い淀む光秀に、視線で先を促す。
光秀は一つ息を吐く。

「そのネズミ…なおの部屋の近くに居たとのこと」

「彼奴は、500年先の未来から来、ここで外へと出たことはない!」
信長の口調はつい荒くなる。

それにも動じず光秀は言葉を続ける。

「それは存じております。」
そのまま光秀は黙り込む。

『彼奴はこの時代に知り合いなど居ないはず…』
考えながら、ふとある事に思い当たる。

「ネズミを見たものを呼べ」
光秀にそう伝えると、光秀は短く返事を返し、天主を出て外へと向かった。

………………………………………………………………

「連れてまいりました」

「御苦労。貴様は下がれ」

「はっ」
光秀が下がったのを見計らうと、来た者に声をかける。

「顔は見たか?」

「はっ!」

その返事を聞き、信長は文机に準備して置いた絵を其方に投げる。

「その絵を見よ」
男は近寄ると絵を覗き込む。

「あっ…」

「その男か?」

「はっ。顔を半分隠しておりましたが、この男だと思います」

「この件は他言無用だ。勿論光秀にもだ!御苦労だった下がれ」
信長はその男に光秀に戻る様にと伝える。

「光秀」

「はっ」

「城内の警備を増やせ、2度とネズミが入らぬ様に…」

「誰なのかわかったのですか?」
その言葉に返事をしないまま

「…もう、調べずともよい」
そう光秀に命を下す。

「しかし…」

「俺がよいと言っているのだ。聞かぬか」
信長は鋭い眼を光秀に向ける。

「…申し訳ありません」

「下がれ」

光秀が下がると信長は絵に目を落とす。

「此奴もこちらに来ていたか…」

『佐助兄。やっと…あ、えた』
昨夜のなおの言葉を思い出す。

信長は文机に打ち付ける様に絵を置く。

「彼奴は渡さん」

その声は天主に低く響いた。




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