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『イケメン戦国』〜生きる〜

第6章 本心


なお目線

『あっという間だったなぁ』

私ははしたないのはわかりつつも、部屋に寝転んでいた。

『馬に乗るって大変…』

秋野と一緒に練習をと、朝から出掛けていた。
広い野原で最初はゆっくりだったんだけど、少しずつ早くなり
『しがみついてるだけで必死だった』

「なお様」
外から声がかかる。

私は慌てて身体を起こし、着物を整える。

「ふふっ。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

『秋野にはお見通しみたい』
少し恥ずかしくて笑ってみた。

「私ではない時もあるのですから、ほどほどにしてくださいね」
釘をさすのも忘れない秋野。

「敵わないなぁ〜。ふふっ」

「この安土で1番なお様を見てますからね」
と柔らかい笑顔を見せる秋野と微笑みあう。

「そういえば、夕餉のお誘いに来たのでした。本日は戦前の宴がありますから、なお様も出席を…と秀吉様に。時間もないので髪だけ整えて向かいましょう」

私は鏡台の前に座る。
今朝結い上げたポニーテールは、あちこちから後れ毛が出ていて、それを一度解いて結い上げてくれる。

「なお様は髪をあげた方が良いですね」
秋野は鏡ごしに微笑む。

「…私、髪あげたの5年ぶりくらい。顔見られるの嫌だから…小さい頃は好きだったの。お母さんがね…『可愛い、可愛い』って言いながら髪をすいてくれて、お父さんが『なおは今日も可愛いなぁ〜』って笑ってくれて…本当に好きだったの」
私は懐かしくその時を思い出す。

「逢いたいなぁ〜」
自分で呟いた言葉に切なくなる。

「なお様…」

「秋野…秋野の方が泣きそうだよ」

「すいません。私も逢いたくなって…」
秋野は失くした子どもを思い出しているんだと、気づく。

「私ね。秋野は気付いてると思うけど、死のうとしてたの」
鏡ごしの秋野の目を見て続ける。

『秋野には辛いかもしれないけど聞いてほしい。』

「すごく、すごく嫌なことが続いて、そこから逃れられたと思ったのに、また…。だから、もうお父さんとお母さんの所に行きたかった」

「なのに、ここにいる。何でだろうって、ずっと考えてる…答はまだだけど…」

「出なくても良いのではないですか?そしたら、なお様と一緒にいられます」

「ふふっ。そうだね」

私は秋野を見つめて、笑った。
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