第4章 一歩前へ
第三者目線
秋野は御膳を取りに行く旨を話し、秀吉達と共に部屋を出た。
「…なお様は何も覚えてらっしゃらないのでしょうか?」
秋野は家康に問いかける。
「…思い出したくない事を思い出して、心が拒絶したのかもしれない」
家康は答える。
「まぁ、覚えていないなら、そのままの方がいいな。あれから、丸2日寝込んでいたしな…。」
秀吉はそう、溜息と共に呟いた。
「あれから何度も叫ばれて…。どんなに…どんなにつらい思いをされたのでしょう…」
秋野は堪え切れない様に、涙を零す。
「秋野。そこはなおにしかわからない事だ。言える様になるまで、傷が癒えるまで見守るしかない…。
お前がそんな顔してると、なおが心配するぞ。」
秀吉は、微笑みながら秋野の頭に手を置いた。
「ありがとうございます。秀吉様。あまり遅いとなお様が心配されますので、失礼致します。」
秋野は頭を下げ、厨房へと足を向けた。
「しかし、なおのあの顔は…。家康も顔が紅かったが大丈夫か?」
秋野が角を曲がると秀吉は呟く。
「っっ…秀吉さんの気のせいです。バカな事言ってないで急がないと、軍議が始まりますよ。」
家康は、そう言うとまた紅くなった顔を隠す様に歩き出した。
秀吉はそんな家康の背中を見送りながら
『あたたかい…』
と呟いた時のなおの顔を思い出していた。
「…辛いことがあっても、あんな笑顔で笑える奴なら大丈夫だろう。お屋形様の大切な人だ。守ってやらなきゃな…」
そう呟くと軍議へと足を向けた。