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『イケメン戦国』〜生きる〜

第3章 輪の中へ


第三者目線

秋野はなおの着付けを終えると、鏡台の前に座らせ髪に櫛を通していく。

「綺麗な髪ですね」
肩先まで伸びた黒髪は真っ直ぐで柔らかく、とても触り心地良い。

「そんなに褒めないでください」
消え入る様な声で抵抗するなおに

「褒める事以外ないのですから、仕方ないではないですか」
鏡越しになおを見つめながら、秋野は微笑んでそう言った。

なおは、顔を赤らめ少し口角を上げる。
その小さな微笑みは、女の秋野でも見惚れてしまうほどの美しさで

「本当に可愛らしい」
自然と口をついて出る。

益々真っ赤になり、下を向くなおにそれ以上何も言わず、支度を整えた。

……………………………………………………………

「さぁ、お支度が整いました」

なおは鏡の向こうの自分の姿に、驚く。

『そういえば、色付きリップ塗るくらいで、お化粧なんてした事なかった』
薄化粧でも、化粧をしたのは初めてで、別人の様な自分を不思議な面持ちで見ていた。


「…準備できたか?」

外から声がかかる。

「大丈夫でございます」
秋野が声をかけると、秀吉が顔を出す。

「おぉ〜。見違えたな!可愛いぞ。なお」

なおは、素早く秋野の後ろに隠れる。

「なお様…」
秋野は困った様に声をかける。

「申し訳御座いません。本日の朝餉を皆様と取ることをまだ伝えていませんでしたので…。」
秋野はそう告げると、なおを向きなおる。

なおは不安一杯の目で秋野を見上げ

「ぃゃ……」
消え入りそうな声でなおは呟く。

「私も一緒に参りますから…ね。」
秋野は安心させる様になおの手をそっと握る。

「一緒に…一緒に食べてくれる?」
なおがそう尋ねると秋野は困った様な顔をして、首を横に振る。
「じゃあ…」

いやと言いかけると

「俺が信長様に頼んでやろう」
秀吉がそう言った。

「そんな。いくら何でもそんな事は出来ません」
秋野が反論すると

「なおは信長様のお気に入りだ。それくらいなんて事はない。他のみんなも、元気な姿を見れる事を楽しみにしてたしな」

「それでも……」
秋野のその声を遮る様に秀吉は

「いくぞ」と歩を進めた。
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