• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第7章 哀傷…


智子と潤の婚礼の日取りが決まったのは、それから間もなくの事だった。

珍しく全員が揃った夕食の後の席で、いつになく上機嫌な父様が、智子を膝の上に乗せ、長い髪を指で梳きながら口を開いた。

「智子と潤君の婚礼を、来年早々にも執り行おうと思っているのだが…どうだね?」

着々と準備が進められているのは、僕も知っていた。

でも…、あまりにも早すぎる。

「私は何も申し上げることはございませんので、お好きにどうぞ」

表情一つ変えることなく、母様は出された珈琲の器を、細い指先で摘んだ。

「そうか。で、潤君はどうだ?」

そう言った父様の手が、智子の細い腰を撫でる。

瞬間、僕の胸の奥で、チリチリと焔が燻り始める。

僕の智子に触れるな!

心の中で強く叫ぶのに、それを口にすることは出来なくて…

僕は膝の上で握った拳を震わせた。

それは僕の隣りに座る潤も同じで…

元々端正な顔を、更に引き締めながらも、テーブルの下では密かに拳を握りしめていた。

「俺に依存はありません。ただ…智子さんはどうなのかと…」

「ほう…、智子の気持ちか…。智子、お前はどうなんだ? 潤君と夫婦になるのは嫌か?」

腰を撫でていた父様の手が、智子の頬の傷に触れた瞬間、智子が僅かに身体を強ばらせた。

それは他の誰にも気付かない程一瞬の事で…

でも僕はそれを見逃すことはなかった。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp