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愛玩人形【気象系BL】

第9章 惑乱…


それからの数日間、僕は僅かな賃金を稼ぐために働いた。

相葉君の伝を使って家庭教師をする時もあれば、二宮君の紹介で倉庫の荷物運びをすることもあった。

僕に出来ることなら何でもやった。

それまで自分でお金を得ることを一度もしてこなかった僕には、どの仕事も辛く、過酷なものだった。

何も手につかないまま、疲れ果てて寝てしまうことも度々だった。

それでも智子のことを思えば、全然苦ではなかったし、寧ろ清々しさすら感じていた。



そうして得た僅かな金で、僕は智子のために指輪を買った。

母様の指を飾る、きらきらとした石も無い、安物の指輪を買うのが、僕に出来る精一杯だった。

智子は喜んでくれるだろうか…

もしかしたら、世間知らずの智子の事だから、もっと豪華な物を僕に強請ったりするんだろうか…

僕は小さな箱を開いては、智子の可愛らしい指に指輪を嵌める瞬間を思い浮かべた。

「智子、もうすぐだから…。後少しだけ待っていておくれ…」




そしていよいよ智子と潤の婚礼を翌日に控えた晩、早めに床についた僕は、思いがけない時間に届いた一通の電報に叩き起された。

こんな時分に一体…

僕は受け取った電報を恐る恐る開いた。

そこにはたった一言…

『サトコキケン』

とだけ記されていた。



『惑乱…』〜完〜
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