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君想ふ

第6章 陰陽師達の思想


妖の一族の長の立場であるからこそ、彼女が掲げる理想に軽く賛同することなどできない。それ故千音を放す九威那。
「…分かってる。人間の中にも善と悪がある様に、妖にも善と悪がある。だから総ての人と妖が分かり合えるだなんて思ってないわ」
でも、と千音は続けた。
「私はまだ今のままじゃ知識も経験も何もかもが足りない。まずは現状に至った本当の理由を知らなくちゃ」
そう。私は人と妖の間に深い溝が出来てしまった根本的な理由をまだ知らない。しかし、調べるにしても本家の書物庫に行かねば禄な情報は得られないだろう。
考えを回らせようとした時、窓を叩く音が部屋に響いた。
「お嬢ー!親分が怪我しちまった!!」
千音にとっては聞き覚えのある独特な高い声に、反射的に千音と九威那はサッと離れた。
「貴方…確か迦具土(カグツチ)の子分よね?」
「おう!それで、オイラ達じゃ親分を連れ出せねぇからお嬢に来てほしいんだ!」
「はぁ…。わかった、準備するから少し待ってて」
そして千音はバッグを1つクローゼットから取り出し、いくつか道具を入れ始めた。
「あ…、九威那も来る?」
ふと思い出したように問う千音。
「…いいのか?」
「うん。まだ本調子じゃないだろうから狐姿でならね」
たまには外の空気吸ったほうがいいだろうしと付け加えて準備を続ける。九威那は一瞬迷ったが、興味の方が勝ったのだろう。小狐の姿になって千音の近くに座った。
「これでいいか」
「うん、上等。…さて!子分くん、迦具土の所まで案内頼むわよ」
「承知!」
こうして千音達は迦具土のもとへ向かうため自宅を後にしたのだった。



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