第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
ジタンside.
目の前で大きな蜘蛛型のモンスターがドサリと倒れると、自分の身体を淡い光が覆った。
振り返るとガーネット、改めダガーが魔法を唱えている所だった。
腕の傷口が徐々にふさがっていく。
「サンキューな、ダガー!」
「ええ……」
オレがお礼を言っても、固い表情で返事をするだけ。
なんだか氷の洞窟を出たあたりから、ダガーの表情が固くなった気がする。
言葉遣いを変えようって提案したからか?
話しかけてもなんだか素っ気ない返事しかしてくれない。
だんだん距離が縮まってきたと思ってたのになぁ。
また振り出しに逆戻りか?
「言葉遣いを変えようったって、別に気負う必要はないんだぜ?」
そう声をかけても、ダガーは曖昧に頷くだけ。
ダガーのやつ、どうしちゃったんだ?
そこで、ダガーは途中からぼーっとすることが増えたことを思い出す。
どこを見ているのかわからなくて、少し心配だったけど……
ダガーの奴、やっぱり体調悪いのか?
それとも……
……だとしたら、アイツが関係しているかもしれない。
氷の洞窟で出会った、アレクサンドリアからの回し者。
他の三人には黙っていたけど。
ひどい吹雪に皆で倒れた後、鈴の音に目を覚まして洞窟の奥へと進むと、ガーネット姫を連れ去ろうとここまで追いかけてきたヤツがいた。
あの異様な吹雪はヤツが起こしていたんだ。
羽根の生えた、とんがり帽子を被った魔導師。
ビビと見た目がそっくりだ、なんて言ったら傷つけてしまうだろうけど、本当にそっくりだった。
そいつはなんとかオレ一人で倒したわけだけど……
ダガーの態度が変わったことと、アイツ、何か関係があるのか?
うーん、と唸っていれば
「ジタン、どうしたの?」
ビビに声をかけられて、思わずビクッと身体を揺らしてしまう。
「いや、なんでもねえよ! さあ、先を急ごうぜ!」
案外ダガーも何か悩んでるだけかもしれないし、村に着いたらそれとなくきいてみるか。
そう結論づけ、再び現れたヘビ型のモンスターへとオレは意識を切り替えた。