第9章 眠らない街~トレノ~
「タイチさんは近づかれるととたんにだめっスね」
トレノゲートを抜け、草原を歩いている時のこと。
スタイナーにサポートをしてもらいながら、お兄ちゃんはクモ型のモンスターとの戦闘をしているのだけど、それを見ていたマーカスが呟いた。
「遠距離攻撃は割といいんスよ。ナイフの刺さる位置もなかなか的確っスから」
モンスターの目とおもわれる場所にナイフが一本突き立っている。
ダガーも頷く。
「そうね……モンスターの攻撃が来ると一瞬ひるむのがよくないわ。短剣の扱いにもまだ慣れてないみたいだし」
そんな話をしていると、スタイナーの大振りの剣筋によってモンスターが絶命したようだ。
近づいて声をかけると、お兄ちゃんは大きく息を吐き出して「おう……」と力ない声で応えた。
げっそりした顔してるなぁ。
モンスターとの戦闘は神経を使う。
ダガーがケアルをかけると、その表情は少しマシになったようでよかった。
「ダガーちゃんのケアルは癒されるな」
「え……そ、そう?」
そんなダガーの反応を尻目に、マーカスが「それよりいいっスか」と話し始めた。
「タイチさん、攻撃がきたら素早く避けるか、剣で受け止めるっス。刃を滑らせて攻撃をそらすっていう方法もあるっスけど、どれにしろ多少の怪我は覚悟するっス」
「回復はわたしがいるから」
お兄ちゃんが苦い顔をする。
怪我は治るとはいえ痛みは減らないのだから、多少の怪我を覚悟するというのもなかなか難しい。