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神威の巫女【刀剣乱舞】R18

第9章 桜の樹の下で 加州清光②※R18



どれくらい、加州に力を注ぎ続けていただろうか。
ひゅうがの力は、命を司ること。
力を注げば、相手の傷を癒したり、草花を成長させることも出来る。
その逆もまた出来てしまう、神に等しい力。
幼い頃は、傷を癒したりと誰かの役に立てるのが嬉しかった。

だが、生と死を併せ持つ力は、彼女が女性として成熟したその日、彼女の身体を不変にした。
ひゅうがの身体の成長は止まり、彼女自身が傷を負っても治ってしまうのだ。

まるで、ヒトの皮を被った化け物。
そう自分を蔑み、力を忌み嫌った。
だが、その力は加州の傷を完全に治した。

加州を助けたい気持ちが溢れ、すぐ側にあった桜が彼女の力に影響されて満開の花を咲かせた頃、加州は目を覚ました。
そして、彼はいつものように優しく微笑んだのだ。

「ひゅうが……、どうしてそんな悲しい顔してるの?俺、ひゅうがの笑った顔が好きだよ」

加州の目が覚めて、嬉しかった。
だが彼が怪我を負ったのは、過去へ送り出した自分のせい。
それなのに、加州はこうしてひゅうがに優しく微笑み、愛おしげに名前を呼んだ。

「…………」

降り注ぐ桜の花びらの中、ひゅうがの頬を涙がつたう。
悲しいからだけではない。
心が満たされたような、幸せな気持ちだった。
きっとこの時から、ひゅうがは加州がより特別だと感じるようになったのだろう。
加州はそれまでと同じ、一歩引いてひゅうがに接していたが、ひゅうがは加州のことを目で追うようになっていた。

しかし、加州がひゅうがの力を知ってしまったら、両親のように離れていくのではないかと考えると、ひゅうがもまた加州から少し距離を保って接していた。

それに、ひゅうがは審神者で、加州は刀剣男士。
歴史を守り、いつかひゅうがの妹を歴史修正主義者から救い出す役目がある。
それを疎かにすることは出来ない。

だから、ひゅうがは誰か一振だけを選べない。
彼女は芽生えたばかりの気持ちに蓋をすることにした。

「…………」

だけど今夜、もし加州がここに来たら、今夜だけは。
力のことを話して、もし加州が自分を受け入れてくれたなら。
今夜だけは、閉じた蓋をそっと開けよう。

「……清光」

ひゅうがは祈るように瞳を閉じた。
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