第6章 赤の兵舎の夜
眠っているアリスにエドガーはそっと手を伸ばして親指でそっと柔らかな頬をなぞり、掛かっていたアリスの髪をよける。
「早く起きて可愛らしい笑顔を見せて下さい」
「ムニュ・・エド・・・たべて・・・・(寝言)」
「夢で俺はアリスに何をされているのか、興味深いです」
エドガーはアリスが起きないように微笑みながら過ぎて行く街並みをただ、見つめていた。
やがて赤の兵舎につき、エドガーはアリスを起こさないようにゆっくりと馬車を降り、扉を開けると壁に背を預けるカイルがいた。
「おや、珍しいですね。待っていてくれたんですか?」
「こういう時、夫を待つ妻は『夕食になさいます』『バスタイム?』『それともわ・た・し』と言うそうです」
「俺はお前の妻じゃねーよ」
「アリス、ママが怒っていますよ」
エドガーはカイルをニコニコしながら茶化すのを楽しんでいた。
「ママじゃねーよ」
「はぁ~、でアリスは寝てるのか?」
「それは残念」
「想定外な事が起きて精神的にも身体的にも疲れたのでしょう」
「そのまま、医務室に来い」
「ランスロットと違ってアリスは幼いから何回も診てやらないといけない。それにお前、怪我してるだろ」
カイルはついて来いと言うように医務室へと向かう廊下をエドガーも後ろに続いて歩き出した。
医務室ー
「そこに寝かせろ」
「少し内装が変わりました?」
医務室の壁はシンプルな真っ白のだったが少しの間で所々にアリスが喜ぶような可愛らしい花が描かれていた。
「あぁ、防音壁にしてアリスの好きそうな壁紙に変えた」
「防音ですか?」
エドガーはアリスをベッドに寝かせるとカイルは脈を測ったり聴診器で心臓や肺を診ていた。
「問題なさそうだな。見た感じ怪我も内出血もなさそうだ。このまま寝かせておこう」
「あとはエドガー、腕を出せ」
エドガーは上の服を脱いでシャツの袖をまくり上げ、カイルに診せた。
「よし、これで良いだろう」
「2、3日ってとこだな」
「ありがとうございます」