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アイナナ夢

第5章 Rey3




私が事務所に来てからすでに数週間が過ぎていると言うのに、レッスン室を使っている形跡もない上に歌声も聞こえない。
IDOLiSH7が活動停止中だと言う事実を知ったのは1週間ほど前だった。
一応事務員だと言うのに、IDOLiSH7のメンバーとほとんど会わなかったのはそのせいらしい。

『それで、私を呼んだのはどうしてですか?』
「あの部屋、使ってないみたいだからね」
『IDOLiSH7が謹慎中なのに私が歌える訳ないです』
「僕は君に自粛しろとは言っていないよ」

別に自粛している訳じゃなかった。
自分の歌が聞かれるのが嫌だった。

『でも…』
「時間は待ってくれない。どちらのデビューが先になるかは君次第だからね」
『私…次第…』
「君はボイストレーニングすればさらに伸びると僕は踏んでいるよ」
『ボイストレーニング…?』

歌は全て自己流だし、楽譜も読めない。
聴いた曲をそのまま覚えて自分流に歌っているだけだ。
トレーニングもレッスンも学校以外ではもちろん受けたことがない。

「努力次第…と言いたいところだけど、一人ではやはり無理がある。先生を付けよう」
『先生?そんな人事務所にいました?』

私が考えていると、社長室のドアがノックされる。
例の先生が来たのかもしれない。
社長が「どうぞ」と返事をすると、入って来たのは万理さんだった。

『どうして万理さんが』
「これでも俺は音楽をやってたから、発声や歌い方ぐらいなら教えられるよ」
『万理さんって何者なんですか…』
「それは事情があって教えられないかな」

私みたいに訳あり事務員って事なのだろうか。
それに、音楽をやってたって初めて聞いたしそんな事誰も言っていなかった。
…?と言うことは、万理さんも私が歌うことを知ってる?

『え、それじゃあ私のことを知らないのはIDOLiSH7だけってこと…?』
「そうなるよ」
『逃げ場ないじゃないですか…』
「言っただろう?原石を消したくないって」

そう言えば、初めて社長に会った日に言われた。
ここまでしてもらってなんだか申し訳なくなってくる。
万理さんだって忙しいのに私のために時間を作ってくれるんだから。

「そう言う訳だから、早速ボイストレーニングをして来なさい」

命令形ですよね。
でも、教えてもらえるなら願ったりだけど…。

「それじゃあ行こうか」
『…はい』
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