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愛される少女【HP】

第80章 クィディッチ・ワールド・カップ


「さて、アイルランド・チームがマスコットを両脇に、ウイニング飛行をしているあいだに、クィディッチ・ワールドカップ優勝杯が貴賓席へと運び込まれます!」

バグマンの声が響いた。突然まぶしい白い光りが射し、私は目が眩んだ。貴賓席の中がスタンドの全員に見えるように、魔法の照明が点いたらしい。

目を細めて入口のほうを見てみると、二人の魔法使いが息を切らしながら巨大な金の優勝杯を運び入れるところだった。大優勝杯はコーネリウス・ファッジ魔法省大臣に手渡されたが、ファッジは一日中無駄に手話をさせられていたことを根に持って、まだ不満げな顔をしている。

「勇猛果敢な敗者に絶大な拍手を...ブルガリア!」

バグマンが叫ぶ。すると、敗者のブルガリア選手7人が、階段を上がって貴賓席へと入って来た。スタンドの観衆が、賞讃の拍手を贈る。私は、チカチカ光っている何千、何万という万眼鏡のレンズがこちらに向けられるのを感じた。

ブルガリア選手は、貴賓席の座席のあいだに一列に並び、バグマンが選手の名前を呼び上げると、一人ずつブルガリア魔法省大臣と握手し、次にファッジと握手した。列の最後尾がクラムだったが、まさにボロボロの状態であった。顔は血まみれで、両眼のまわりに見事な黒いあざが広がりつつあったのだ。まだ、しっかりとスニッチを握っている。

『...痛いわ...』

クラムがこちらを見た気がするが気のせいだろう。クラムは、脚はガニ股気味で、はっきり猫背になっていた。それでも、クラムの名前が呼び上げられると、スタジアム中が鼓膜が破れんばかりの大歓声を送る。

そして、アイルランド・チームが入って来た。エイダン・リンチは、モランとコノリーに支えられている。2度目の激突で目を回したままのようで、妙に焦点が合っていない。

『...大丈夫なのかしら...』

大丈夫かはわからないが、トロイとクィグリーが優勝杯を高々と掲げ、下の観客席から祝福の声が轟き渡ると、嬉しそうにニッコリした。そして、アイルランド・チームがボックス席を出て、箒に乗り、もう一度ウイニング飛行をはじめると(エイダン・リンチは、コノリーの箒の後ろに乗り、コノリーの腰にしっかりしがみついてまだボーッと曖昧に笑っている)、バグマンは、杖を自分の喉に向け唱えた。

「"クワイエタス(静まれ)"!」

そのあと、かすれた声でバグマンが言う。

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