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愛される少女【HP】

第76章 準備


夏休みに入り、私は自分の部屋で真剣に本を読んでいた。その本は、マーレイ家特有の呪文である'セラペイア・パナケイア'だ。1年前のクリスマスに両親からもらったのだが、読む暇がなくて読んでいなかった。

しかし、今年は必要になるかもしれないと思い読んでいたのだ。この本を読んでわかったことがある。まず、この呪文にはコントロールが必要なこと。私はコントロールが出来ていなかったため、重症の怪我を治しただけで眠ってしまっていたのだ。

「何をしているんだい?」

本を開いたまま思案していた私に、実体化したトムが問いかけた。

『本を読んでいたの』

それは見ればわかるという顔をしたトム。私はくすっと笑う。それから、マーレイ家特有の呪文である'セラペイア・パナケイア'についての本を読んでいたこととコントロールが必要なことを、ちょうど読み終えた本を閉じて私はトムに伝えた。

「コントロール?」

『えぇ。やり方は本に書いてあるから、ホグワーツに戻ったらやってみるわ!それと大切なことがもうひとつあるの!』

私は顔を綻ばせる。

「なんだい?」

『死の呪文を受けた人にも、この呪文は効くのよ!』

「それ、本当かい?」

トムは驚いた顔になった。それもそうだろう。死の呪文は反対呪文が存在せず、当たってしまったら最後と言われているのだから。

『本当よ。これでたくさんの人を救うことが出来るわ』

「...ユウミ。親しい人以外に使うのは許さないよ。本当は、使うのをやめさせたいくらいなんだ」

私から受け取った本を読んでいたトムが怖い顔で言った。私は、トムの言いたいことがわかったため首を傾げて問いかける。

『副作用のことを言っているの?』

「そうだよ。ここに書いてあるじゃないか。副作用は大きく、眠ったまま目覚めないことがあるって」

可能性があるだけで、本当に目覚めないかはわからないと反論したが、トムは頑なに首を横に振りこう言った。

「ユウミ、君の父親だってこのことは知っていたはずだよ。君に呪文のことを言わなかったのは、使ってほしくなかったからだろう?それなのに、本を渡してくれた。ユウミはそれに応えて、ちゃんと考えるべきだよ」

私は、口ごもる。それは私も考えたことだったからだ。お父さまが私に言わなかったのは、副作用のことを考えてだろう。

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