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秘密

第10章 好きのかたち


玄関の扉の前で

深く深く何度も深呼吸をする…



"戻ってこい"


そうすばるくんは

あの日言ってくれたけど



それでもあの日から

私たちは一度も会うこともなく


とても長い日々が過ぎてしまった




人の気持ちを

変わるものだってことを



誰よりも解っているから




弱虫でずるい私は


亮ちゃんのせいにして


自分の気持ちからも

すばるくんの気持ちからも



逃げ出そうと

していたんだと思う…




そんな私が今こうしてここにいるのは


痛いぐらいの愛で

亮ちゃんが弱虫な私の背中を

押してくれたから…




だから今

この扉が開いて

どんな結果が待っていても



きっと私は

また前を向いて歩ける

そう思うんだ…




小さくカタカタと震える指で

インターホンのボタンを押すと




ガタガタと中から人が動く音がして

目の前の扉がゆっくりと開く…



今すばるくんがどんな顔をしているのか

知るのが怖くて


ぎゅっと目を閉じたまま





怖がるな…私…!!

逃げるな…私…!!



そう自分に必死に言い聞かせていると




すばるくんの手が

私を引き寄せて



「おかえり…」



そんな温かい言葉が

怖くて震えていた私の体を

ふわりと優しく包み込んだ…
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