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悪魔が嘲り、天使は堕ちる

第2章 始まりの場所



 「・・・・・・」

 目を開けると、物凄く見覚えのある青空が、視界いっぱいに広がっていた。

 寝て・・・いや、気絶してた・・・?

 「お目覚めですね」

 頭上から声が聞こえる。
 そちらに目をやると、気を失う直前まで話していた女性が、私の顔を覗き込んでいた。

 「あ・・・っ、すっ、すみませっ」

 慌てて体を起こす。
 私はどうやら、亀の甲羅の上で寝そべっていたらしい。
 ゴツゴツとした甲羅が生暖かくなっていた。

 「大丈夫ですよ。天使になる人、全員が通る道ですから」

 くしゃくしゃになった髪を整える様に、女性は私の頭を撫でた。
 
 「貴女を、輪廻転生の理から外しました。貴女は、もう人ではありません」

 人では無い。
 
 甲羅にぺたりとついていた手を見てみるけど、何も変化していない。
 水面に映る姿もそう、何も変わっていない。

 「姿、形は変わりません。羽や天使の輪があるのはおとぎ話の中だけ」

 私の心を見透かすように、女性が説明する。

 「私は・・・もう天使になったんですか?」

 「ええ、貴女はもう天使です」

 「格好も、このまま・・・?」

 視線を下ろし、最期に着ていた服のままの自分の姿に、目を向ける。

 「いいえ、今から正装を渡すので、それに着替えていただきます」

 そう言って、女性は後ろを向き、両手を空にかざした。
 すると、空から一本の糸が伸びてきて、シュルシュルと女性の手の平の上に重ね重ね伸びながら降りてきた。

 そうして何十の束になった糸の先を指で千切り、女性はその束を2、3度こね回して・・・。

 「これが、貴女の正装です」

 そうして出来た正装を渡されて、驚きつつも、肌触りの良い純白の服を受け取った。
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