第1章 始
~一ヶ月前~
「……靴、泥まみれ」
帰宅時、みんなが部活や帰宅などでバラけてからしばらく経ったあとに私は帰ろうとゆったりとした足取りで下駄箱がある一階に向かうことにした。
きっと今日も、なんて考えながら下駄箱がある場所に着くと誰もいないことにホッとしながら自分の靴が入っているであろう場所を見るといつも通り私の靴にイタズラがされていた。
どこかの汚れた水溜まりにでも浸けられていたようにびっしょりと濡れ、なかにはご丁寧にも泥が詰め込まれていた。
これをした人は手を汚してまでこんなことをしたのだろうか。
ご苦労なことだな、と苦笑いを浮かべながらも小さくため息を吐いた。
昨日は水浸しになっていて一昨日は、押しピンがたくさん入っていた。数日前は靴紐が行方不明くらいの被害だったのに誰にも相談せず黙っているだけでやられることがエスカレートしているところを見ると今度は何をされるのだろうかと少し興味があった。
靴に飽きてきたら他のことをするだろうとは思うが、既に自分の教科書には見事な落書きがびっしりで体操着なんてハサミで切り刻まれてボロボロになっている。多分ではあるが靴を痛め付けている人と教科書と体操着をボロボロにした人は別人だろう。じゃなきゃ毎日こんな重労働のようなことを一人の人間ができるわけがない。私ならやらない。疲れそうだし。
そして一番の謎はなぜこんなことをされるようになったのか、だ。
理由は、わからないこともない。
私のこの性格が原因だろう。
話しかけられても挨拶しか返さず遊びにいこうと誘われても断っていたのが原因なのかもしれない。
話しかけられても何を話せばいいのか、お出掛けに誘われても静かなところが好きなために誘いを受けることもなかった。
人間というのは自分達と違うことをする人を気に入らないと聞くし、それだけでも同性から嫌われるのに最近は優しくてかっこいいと噂されてる先輩から告白をされてしまった。
噂程度でしか知らなかったし付き合うとかよくわからなかったから断ったけど、女子からしたら告白されたことも気に入らなければ振ったことも気に入らなかったらしい。
同じ女だというのによくわからないものだ。