ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第3章 少し関係の進んだ身代わりの話
お腹が膨らむと眠くなる。
もとより疲労困憊していた桜はうとうとと船を漕ぎ、そして覚醒して顔をあげる。という行為をくりかえしていた。
頭をうつといけない、そう諭して彼女をソファー運ぼうとすれば、そのままくてん、と全てを預け、眠りについてしまった。
ふふ、と愛おしげに笑ったヴィクトルは彼女を起こさないよう、寝室へ移動して、ベッドへ寝かせた。
ーーー桜は合鍵を持っているので自分が出かけても施錠してもらえる。
だから、今はゆっくり寝かせて上げよう、とヴィクトルはそう考えて、練習に行くための準備を初めた。
念のために施錠を頼むメモをドアの取っ手に貼り、お留守番と桜の警護をマッカチンに頼んでいると、ヤコフから遅いとお叱りの連絡を受けてしまった。
後ろ髪を引かれながらも、ヴィクトルはこれ以上ヤコフにうるさく言われないために、残留したい思いを断ち切って家を出た。
桜が起きたのはヴィクトルが家を出てから三時間が経った頃で。
体の痛みもマシになっていたため、マッカチンに別れを告げて、メモの通りきちんと施錠をしてからのんびりと帰路についた。
あの日以降、ヴィクトルは桜を抱く際に一切ユーラと口にする事がなくなった。
さらに最近食事や映画、練習を見にこないかと誘われるようになり、練習を見に行く以外は用事が無ければその誘いを受けていたが、そこにエッチは伴わず、支払いも全てヴィクトルが持つので、まるでデートのようだと桜は自身の立ち位置が分からなくなってしまった。
(これじゃまるで恋人同士みたい。)
決して有り得ない事なのに、今の関係に名前を当て嵌めるとしたら、それが一番しっくり来た。
そして、自覚してしまった。
桜がヴィクトルを恋をしてしまったことを。
ぴこん、とメッセージの到着を告げる音が鳴り、画面を見れば、今考えていたその人からのもので「明日のお昼時間が空いたから一緒に食べようよ」と書かれていた。
(これ以上好きになってしまう前に距離を置いた方がいい。)
そう思った彼女は、特に用事も無かったのに、無理やり用事を作って彼の誘いを断った。