第2章 壱
「夏目、寄り道するんじゃないぞ」
「分かってる。買ってくるのは四つだけだからな、先生」
夏目はニャンコ先生に頼まれ、七辻屋の饅頭を買いに出掛けていた。
――――全員分買えて良かった。
七辻屋の饅頭はすぐに売り切れになってしまう為、夏目は安堵したと同時に、滋さんと塔子さんの喜ぶ顔を思い浮かべ嬉しそうに微笑んだ。
帰宅途中、セーラー服を着た見慣れない少女が視界に入った。
辺りをキョロキョロしながら、進んだり引き返したりと奇妙な動作を繰り返している。
「どうかしましたか?」
声をかけると、彼女は驚いたのか肩がピクリと跳ね、ゆっくりこちらに振り向いた。
そして、不安そうな表情を浮かべながら話し出した。
「……あの、簪を探しているんです。
蝶の付いた銀色の簪なんですけど、普通のとは違って、桜の模様があって」
「どうしてその簪を探しているんですか?」
夏目は彼女の話を遮り問いただした。
だが、すぐに彼女を吃驚させてしまったと後悔し、すみませんと謝る。