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よるがあけるよ

第1章 常闇のアンドロイド



『ねぇポッド、朝日って見たことある?。』

随行支援装置ポッド107の放つ光に照らされながら、少女の姿形をしたアンドロイドがそんな質問をした。
『地平線からお日様が顔を出して草花や人類に挨拶してまわるんだって書いてあるよ。』
つい先程拾ったボロボロの絵本には太陽の昇る様子が描かれている。かつては当たり前のように繰り返されていた現象であったが、地球は長い長い時を経て地軸が歪み、自転周期や公転周期の奇跡的な噛み合いによって完全に夜の地帯と昼の地帯に分かれてしまっていた。
それ故、生まれてこのかた一度も夜の地帯以外に配備されたことのない10Dは地球から臨む太陽を見たことがなかったのだ。
「否定:随行支援している10Dが見たことのない景色はポッド107も見たことがない」
触覚を手のように動かしながらポッド107が答える。
『夜の地帯と昼の地帯の境目に行けば、似たようなものが見れるかなぁ……。』
「警告:任務と関係のない地域に行くことは任務放棄と捉えられる可能性有り。即ち10Dが脱走兵として罰則を受けることは容易に想定可能」
無機質なポッド107の言葉に10Dは諦めきれない素振りでうーんと唸る。
『司令官かオペレーターに連絡してから行くのは?。』
「否定:任務と関係のない行動の申請は却下される可能性大。推奨:大人しく与えられた任務を完遂する」
ポッド107が早く進めというように10Dの背中を本体で押した。
『ちぇっ……まぁいいや。また今度行く機会をもらえるかもしれないし、それまでは我慢しとこう。』
そう言うと、10Dはポッド107の機体に掴まり建物から飛び降りた。
フワフワとゆっくり地面に落ちていく。暗くて地面まであとどれ程あるのかよく分からないが、複数の機械生命体の目から滲む赤い光の粒を視界に捉えて着陸に備える。
『ポッド、ガトリングお願い。』
「了解:ガトリングにプログラム変更」
地に足が着くより少し前にポッドから手を放し背負っていた武器を素早く構えた。
湿った土とコンクリートの感触が足に伝わるのを合図に機械生命体の群れに突っ込んだ。細身の小剣でダメージを与えては距離を取るのを繰り返して地道に数を減らしていく。
D型はディフェンダーのDだ。耐久性の他に回避能力も優れている。
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