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忘却鴉

第9章 二年後


 二年間とても濃かったなぁ。
 実家に戻って親に頭下げて退学を許可してもらったり、黒羽丸や妖怪のことを説明したり、他の組へ挨拶に行ったり、高尾山に行ってお義母様に挨拶に行ったり。お義母様美人だったなぁ、ささ美さんが美人なのも納得する。
 妊娠したり、黒羽丸の真面目さと心配症が度を越し始めたり、子供が生まれた日には死に物狂いで仕事を終わらせてきて薬鴆堂まで来てくれたっけ。

 そうそう、黒羽丸はお義父様の跡を継いで天狗党の党首になりました。
 まぁそれでお義父様は家に居つくわけでも、黒羽丸と高尾山で暮らすわけでもなく、それこそ総大将様に付きっきりになり、来年のお正月もお義父様はお義母様に叩かれるんでしょうね。

「ユリさんただいま」
「おかえりなさい黒羽丸。ことり、お父さんが返ってきたよ」

 第一子は可愛い女の子で、黒羽丸は私似だと言うが目は完璧に黒羽丸譲りだ。

「今日はね、お昼寝のとき私の指を離さなかったのよ。子供って力強いね」
「お転婆になるんですかね」
「案外そうかもしれないわね」

「なんだか今でも少し信じられない。黒羽丸と出会って結婚して、子供まで出来ちゃった」
「あの時俺が記憶喪失になってなければ、こうして家族になることもなかったんですね」
「覚えてる? 真夏なのにクーラーも扇風機も付けずに茹でダコみたいになってたの」
「まだその話するんですか!?」
「この子が大きくなっても話すわよ。もうおっかしくって」
「もうやめてください……」

 かみさま ねがわくば
 このしあわせが えいえんのものとなりますように
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