第7章 帰還
ユリさんがトサカ丸から連絡先をもらっていてよかった。正直どうやって連絡を取ればいいのかわからなかった。
「……予想してた以上に大きいね」
「……俺はここで働いていたのか」
連れてこられた場所は想像以上に古い大きな屋敷だった。
仕えていた感覚からある程度は予想していたが……。
「とりあえず、おかえり兄貴。あんたも……ユリさんだっけ? 兄貴の面倒を見てくれありがとう!」
トサカ丸は見た目以上に礼儀正しかった。
父親の躾がいいのだろう。
「中で親父が待っている」
ここまで躾が良いのだ、きっと父も厳格な方なのだろう。
「よく帰ってきたな黒羽丸」
……。
「トサカ丸さんふざけてます?」
「ばっ! 違うんだよ、正月に実家に帰る度にお袋に叩かれ続けて年々縮んでんだよ」
「トサカ丸何を話しておる」
「……なんも」
「さて、黒羽丸よ、お主どこまで覚えておる」
「名前と、俺が妖怪だということ、誰かに仕えていたことしか思い出せていません」
「そうか。リクオ様のことは覚えておるのか?」
「いえ、知りません」
リクオ様……それが俺が仕えていた人?
「ユリ殿」
「はい!」
「息子を、黒羽丸を助けていただき、ありがとうございます」
「え、あの、頭をあげてください! 私は大したことはしていないんですよ」
「いいえ、息子が行方知れずとなり一月、家族一同生きた心地がせず眠れぬ日々が続きました。ようやく会えた息子に大事なく、よかった……本当によかった」
大きな目から落ちる涙を見て、一つの記憶が蘇った。
高尾山の集落で親父を叩く母さん、それを笑っているささ美とトサカ丸。
そうだ、俺の家族だ。俺達は三つ子、三羽烏!
「トサカ丸!」
「おぉう!?」
「ささ美はどこにいる!」
「兄貴、記憶が……ささ美なら多分部屋だ」
「ありがとう!」
最低だ!
俺は兄弟に向かってなんてことを……!
「黒羽丸はどうしたの?」
「あーたぶん思い出したんだろうな。家族のこと。兄貴はクソ真面目だからな、ささ美に昨日のこと謝りに行ったんだろ」
「トサカ丸席を外せ。私はユリ殿に話があるのだ」