第9章 織田作之助/キミと描く物語
初めてだったのに、無理をさせ過ぎたかもしれない。
少し、反省する。
「…センパイも…、気持ち良かったですか…?」
「勿論だ」
「良かった…」
ふにゃりと笑うところが、また可愛い。
柔らかい髪を撫でれば、気持ちよさそうに目を細める姿がまるで猫のようで。
「センパイ、次こそは私が気持ちよくさせてあげますからね」
「それは…楽しみにしておこう」
「絶対しますからね!! それから…私、もっと文学について勉強します」
「??」
「センパイが描く小説…そのお手伝いがしたいですから」
「覚えていたのか。小説の事…」
「忘れる訳ないじゃないですか! それ聞いたときからお手伝いしたいなって思ってましたもん…」
「…そうか。それは助かる」
「どんな物語になるんだろう…。せっかくなら楽しい物語がいいなぁ」
「…そうだな。約束しよう。きっと、いい作品にする」
「いいですね!約束!!私もお手伝い頑張るって約束します!!」
そう言い合って、小指を絡めた。
笑いながら、ぎゅっと強く絡めて、意味もなく上下に振った。
その数日後だった。
織田作之助が、この世を去ったのは。
Fin.