第9章 織田作之助/キミと描く物語
「やあ、織田作♪」
「太宰か」
一仕事を終えて帰還したところ、太宰に声を掛けられた。
太宰治。俺たち組織の幹部であり、俺の大切な友人だ。
やけに機嫌が良さそうな太宰を見て、察する。
「…今日も行くか?」
「さすが織田作!話が早くて助かるよ♪」
「安吾もいるのか?」
「勿論!もう声は掛けてあるよ♪」
根回しの速さに感心しているところ、バタバタと聞き覚えのある足音が聞こえてきた。
「織田作センパーーーイ!!!」
角のコーナリングを見事に行い、太宰を押しのけて勢いよく抱き着いてくる少女。
名を月尾 聖子という。
「廊下でやるのは危ないぞ」
「あっ、ごめんなさい織田作センパイ!大丈夫でしたか!?」
「俺よりむしろ太宰が大丈夫か?」
「まぁ何とか……えっと…何だいこれは?」
「挨拶です!」
「挨拶? …織田作」
「まぁ、いつものことだ」
困惑というより呆れているような表情の太宰に彼女を紹介した。
俺の後輩で、見ての通りやたらと元気な子だ。
そして聖子には、太宰を紹介した。
「あ…貴方が太宰さん…織田作センパイからお話は伺っておりました」
「そうなんだ?」
「最年少幹部で…織田作センパイをそそのかす私のライバルですね!」
「……ん?」
「お酒を呑ませて織田作センパイを酔わせあんなことやこんなことをするつもりなんですよね!?ずるいです!!」
「あんなことやこんなこととは何だ?」
「あぁぁぁぁいけません織田作センパイ! 織田作センパイは知らなくて良いのです、そのままクリーンなままで良いのです!!」
「???」
意味が分からなくて太宰に問おうと思ったら遮られてしまった。
太宰はと云うと、とても楽しそうに笑っていた。
「キミ、面白いね♪ そうだ、良かったらキミも今夜どうかな? 一緒に呑んでみる?」
「行きます!! 織田作センパイを好きにさせませんからね!!」
「それはそれは、恐ろしいナイト様だ♪」
「ナイト?」
「じゃあ、今夜楽しみにしているよ♪」
それだけ言い残して、太宰はスタスタと歩いて行った。
よく分からなかったが、二人とも楽しそうだったので良しとしよう。
俺と聖子はそれぞれ次の仕事をこなし、一緒にいつものルパンへと足を運んだ。
そこには既に太宰と安吾もいて、俺たちを迎えてくれた。