第5章 【伊武崎峻】言えなかったこと
たこ焼きと焼きそばの出店は少し離れた場所にあるようで、各々で買いに行き、また落ち合おうということになった。
「おじさん、焼きそばひとつ」
前に並んでいた人の背が消えたので、じゅうじゅうと音を立てる鉄板の向こうに立つおじさんに声をかけた。
「はいよ、五百円ね」
「はい、これで」
待っている間に小銭入れから取り出していた五百円玉を手渡すと、少し待つように言われた。
おじさんの隣に立つお兄さんがパックの中に焼きそばをつめ、定番の青海苔と紅しょうがをトッピングする。
蓋が閉められ、割り箸と一緒に輪ゴムで止められたそれをこちらに差し出される。
「ありがとうございましたぁ!」
浴衣の袖を逆の手で抑えながら受け取り、小さく頭を下げてその場を離れた。
やはり辺りが暗くなるに連れて人の数が増えているようで、茜の姿を探すのに少し苦労した。
さっき別れた場所の辺りにその姿を見つけ、小走りで近付いて行くとクラスの男子が一緒に居るのもわかった。
「ぁ、〜!こっちこっち!」
私に気付いた茜がまた大きく手を振るものだから、呆れ混じりに溜息が溢れる。
それにしても、木下くんと蜂谷くんまで居るなんて聞いてない。
「こんばんは、さん」
ゆるやかに笑って、一番に話しかけてくれたのが木下くん。
「こんばんは。木下くん達もお祭り来てたんだね」
眼鏡の似合う温和な男子で、クラス委員もやっているしっかり者っていうのが私の勝手なイメージだ。
「なぁ、!俺らも二人と一緒に祭り見て回ったらダメかな?」
私に向かって手を合わせ、そう頼み込んで来るのが蜂谷くん。
「ダメだって言ってるでしょ!今日はと私のデートなんだから!」
「そこをなんとか!頼むって〜!」
*