第19章 友が為
「幕府から護り通した、とびっきりのやつだと?」
高杉は思わず聞き返し、雅は軽く頷く。
「幕府は私達を中々倒せなくて、余程苛立っているはずだ。だから苦肉の策で、自分の首を締めるような真似をした。あんな……」
「!」
雅の空気が変わる。そして思う。
"蠱毒"の恐ろしさは、私が一番よく知っている。
幕府軍や天人側の兵数が多い分、その被害も大きいだろう。
敵はおろか味方の命でさえも気にも留めず、命の価値を何とも思わない。
戦っていうのは、敵を燃やし殺すための炎みたいなものだ。
アイツらは、それを大きくするためなら、仲間の命でさえも、石炭のように躊躇なく焚べる。
果たしてどちらが本当の死神なのか。
(虫唾が走る……)
アイツらの目論見は分かるさ。
・・・・・・
だから敢えて、私の専門分野である毒を使ったんだ。
だが、1日でも早くケリをつけなけば、"双方"(幕府軍と反乱軍)共倒れになる。
そうなれば、倒幕どころか、天人にマジで地球を植民地にされてしまう。
地球滅亡の危機であれば、こちらとて
・・・・・・・・・・・・
切り札を使わない手はない。
(向こうが星崩しの切り札を使ったなら、こちらも最強のカードを切るさ。10年前の忘れ物を取りにね)
それからは雅は、桂に2つ要求をした。
1つは、1週間という時間だ。
蠱毒の毒成分を分解し、中和できるワクチンを作るには、"龍毒"は必要不可欠である。
しかしそれだけでは足りない。
カルピスの原液を薄めて美味しく作るように、調合が必要なのだ。
そのまま飲めば体に毒だが、水や炭酸水を混ぜれば、また違った飲み物になり、心の栄養になる。
そのように応用するための時間。
そしてもう1つは、
「この件は、全て私に任せてもらう。アンタらは戦の方を頼む」
あるべき形に戻すこと。
自分は本職である医術に徹し、戦場は全て桂と高杉達に委ねること。
「私は私の戦場で力を使う。アンタ達には、私とは違う力で、仲間を護って欲しい。それだけだ」
桂は何の異議も唱えず、快諾した。
雅がこれ以上戦に出ず、無茶をしなくなるのであれば好都合。
皮肉にも、追い込まれた状況になった故、雅が考え直してくれたと安堵した。
一方、高杉の方は……