第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
まさか、私がこの世界へ来るとは思わなかった。
私はあの世界で死んだ。
死んだ筈なんだ。
彼の刀が私の胸を貫き、ゆっくりと確実に心臓を捉え、私の刻を止めた。
普段から余り表情を表に出さない彼が、これでもかと言うくらい目を見開き、崩れ落ちる私を目で追う。
そんな彼に向かって" ごめんね "と言った。
私の声は届いたのだろうか。
彼は、何度も、何度も私の名を呼ぶ。
だけど、私にはもう聴こえない…。
所詮、あの世界では私は異物にしか過ぎない。
彼で良かった。
あの世界では、もう私の愛した者達はもう居ない。
だから、貴方で良かった。
私が最後に愛した貴方で、
良かった。
揺れる、ゆれる。
廻る、まわる…。
闇色夢綺譚~花綴り~