第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
ふわりと浮かぶ輿を器用に乗りこなす。それが作り出す緩やかな風に大谷様の使用している薬品の匂いが私の鼻を燻る。
「あ…」
彼との距離は数センチで薬品の香る包帯だらけの手が私の頬に軽く触れる。
「噂通りか、傾国の花よ」
噂とはなんの事だろう、とそう思った瞬間、私の身体は宙へと浮いていた。
「は、えぇっ!?」
え、あの宙に浮いている数珠と同じ?いつの間にか大谷様の腕に抱かれていた。
「ヤレ、ヌシの部屋へ案内しよか」
着いて参れと大谷様は言うが、私は大谷様の輿の上。オマケに抱き抱えられ、 着いて行くと言うよりもtake away(連れ去る)だ。
「って何でやねん!」
ツッ込んでしまうのは致し方ない。
刑部さんは以外とお茶目な方なのだ。
「ヒ-ッヒッヒッヒッ…うぉえっぐはっっ!」
笑いの沸点が低い大谷様はちょっとした事でも大声で笑い出す。そのうち箸が転がっただけでも笑いそうだわ。
そんな事を思っていると息も絶え絶えになりながらも私に向かって口に出ているとやんわりと教えてくれた。
「………」
あぁ、またやったのねと次からは本当に気を付けなきゃいけないなと心の底から思いました。
「って作文!?」
「ヒッ…」
…不幸よ、フコウ。ワレらの元へ不運な花が舞い降りた。ワレはその花がどう散り行くか楽しみよ。
やれ、どれが囚われの鳥か、はたまた捉える籠か、ワレはゆるりと傍観しよか…。