第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
「…はーい、怪我はない?」
名前ちゃんを受け止めた俺様はやんわりと抱きしめ耳元で囁く。
「猿飛…佐助!!!」
これでもかと言う位に見開く翡翠の瞳。
あ、綺麗と思った束の間、瞬時に殺気がこもり俺様に向かって怒鳴る。
「どけっ!離せ!」
私は、アイツが許せない!
そう叫んだ彼女はバサラを使い俺様の抱きしめた腕を振りほどこうとした、その時だ。
「名前!半兵衛様はアンタにそれを望んじゃいない!」
アンタに託したのは " 復讐 " ではない筈だ!
島左近が名前ちゃんに向かって叫ぶ。
だけど彼女の視線は祈織に向き、聞こうともしない。
「あの花の言葉を忘れたのか!!」
半兵衛様は…復讐なんかに囚われるな、幸福になって欲しい…だけど、傍にいた事をっ!!
" 僕を、忘れないで…"
あれだけもがいていた名前ちゃんは島左近の言葉で動きが止まった。
「あの人はこうなる事を見越してその花を贈ったんじゃないのかっ!!」
抱きしめていた名前ちゃんの身体が震える。
ゆっくりと俺様の手を握りしめ、あの人の名前を繰り返す。
「名前ちゃん、アンタが汚れる事はないんだ…」
俺様は名前ちゃんの顔を両手で挟み、無理矢理視線を俺様に向けた。
殺気立った瞳は次第に濁り、その翡翠からは幾つもの涙が溢れる。
汚れるのは、俺様達だけで良いんだ…。
「は、半兵衛、さま、半兵衛、様…私は、わたしは、ワタシはっ!!」
そう言った瞬間、彼女は全身を俺様に委ねた。
「ククッ…面白い!今日は退却してやろう」
祈織は俺様達のやり取りを面白いと言った。
それに対して豊臣の左腕の犬…島左近が吠えるもお構いなしに言葉を続けた。
「…伝えろ」
もう少しであの戦が始まる。
その時、お前が一番悲しむ方法で…
「お前を消す」
その時だ。
耳を劈くような甲高い音と共に馬鹿みたいに大きい影が祈織の元へ降りたった。
「っ!アレは!!」
俺様達は祈織らが消え去るまでその場所を見ていたんだ。
「徳川、家康、本多忠勝…」
そして、俺様達はまだ知らなかった。
この時、既に…
徳川家康の手によって、豊臣秀吉が討たれていた事を…。