第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【forty-ninth.】
※前回同様セリフ抜粋・捏造有
「っ…がはっ!」
久方ぶりの賢人の " アレ " は昔よりも深刻であり、言うならば…
" 時間切れ "
「…済まない、大谷君…」
やはり、ここまでのようだ、と確信を付く事は話せぬらしい。
口元を拭う賢人の姿は見ていられぬ…。
「もう一つ、これは話せる」
" 彼女は、知っている "
俺は走った。
名前の事だ、半兵衛様の言う通り大人しく待っている筈がない!!
「っ…!」
クソっ…
遅かったか…。
名前を残した場所は見事にもぬけの殻で、俺は足元に落ちているそれを拾うと自身の風で引き裂いた。
奴の速さに追い付ける事は難しいが、向かう場所は一つしかない。
俺は踵を返し、全速力で元来た道を走った。
「っ…!」
俺が戻ると既に二人の戦いが始まっていた。
「ついに…始まってしまった…」
俺はそう呟き刑部さんの隣に行き、名前の事を告げると、刑部さんはため息を零すも想定内よ、と言う。
「しかし、まだ姿が見えぬ」
攫われたと言う訳でもなかろ、と俺はそれに頷いた。
名前と奴は仲が良かった筈だし、今回の事であの松永久秀が関わっている、とも考え難い。
そう思っていると、刑部さんが二人を指差し、こう言った。
「左近、この戦…しかと見ておけ」
俺は黙ってそれに頷き、自身の目に二人の姿を焼付けた…。