• テキストサイズ

【戦国BASARA】闇色夢綺譚 ※R18

第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~


【twenty-ninth.】











繋いでいた掌が解かれ、冷たい風が掌を覆った。
微かに残る彼の温もりがどんどんと消えてなくなってしまう。

やだ…。

まだ、触れていたい。

もう少し、傍に居たい。

でも、そんな我が儘言って良いの?

彼は忙しい人できっとこの後もお仕事をするに違いない。

でも…

もう、抑えて居られないよ…。

伝えたいよ…。

触れて居たいよ…。


溢れ出す想いがわたしを変える。

手が、足が、身体が、勝手に彼を追いかけた。


待って、


わたしの傍に居て…。


わたしは、こんなにも

こんなにも、貴方の事が…。



「行かない…で」



声が掠れる。
たった一言、これだけでも人生の半分を費やした様な気持ちになる。

じゃあ、本当にわたしの想いを伝えたら?


それを言葉にして、彼もわたしと同じ想いだったら…



わたしはきっと死んでも良いと思ってしまう…。



そう夢を見ていると、優しく握られていた掌が少しだけ痛みをともなった。

そして重治さんは少し乱暴にわたしの手を引き、自身へと引き寄せる。

「きゃっ!」

何時もは優しくて、わたしを尊重してくれていた重治さん。
だけどこの時はいつもと違っていて瞳はギラギラと鋭くなり、抑えていたものが抑え切れなくなり、暴発した様な感じ。
上手く言えないけど、初めて彼の中の" 男 "を見た様な気がした。

「君の、せいだ」

強く手を引かれ、わたしの部屋へと投げ入れられる。
運良く女中さんが先に敷いてくれていた布団の上に転がり、痛みなどはなかった。

「っ!重治さんっ!?」

戸が強く閉まる音が響く。
彼の鋭い視線がわたしを貫く。

「僕がどんな思いで耐えてきたか…」

分かるかい?

そう言い、彼が此方へゆっくりと近付いて来て、わたしの頬に手を添える。
思わずわたしは後ずさるも、直ぐ後ろは行き止まりの壁で、わたしはどうする事も出来なかった。

「君が…あの日、いや…」

あの、日…?

わたしはあの日とは何かを尋ねようとしたその時、彼は顔を背けながら
わたしに謝り、この事は忘れてくれと言い出て行ってしまった。



頬に残る温もり。
初めて感じた本当の彼。



閉まる戸の音だけが切なく残っていた。
/ 277ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp