第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
【ゆるり、ゆるりと籠の鳥】
今日、三成が此方に来ると聴き、忠勝の背に乗り、急ぎ大阪城へと向かった。
「やあ、家康君。良く来たね。早速で悪いが、君に頼みたい事があるんだ」
ワシは半兵衛殿に三成がまだ到着していないので様子を見てきて欲しいと頼まれ、ワシは再度忠勝の背に乗り、三成が来そうな道へと向かった。
暫く飛んでいると微かに血の匂いとその中に花のような甘い匂いが漂う。
この雨の中、血の匂いは掠れているが、この甘い匂いは残ったまま。
しかも強くなる一方だ。
流石に可笑しいと思い忠勝と呼ぶと少し下がって飛ぶ。
その匂いを辿って行くとワシは目を見開いた。
あれはっ!
直ぐ様忠勝から飛び降り、囲んでいる奴等を蹴散らす。
「おい、大丈…っっ!!」
ワシは見ては行けない物を見た様な気がした。
何故だか罪悪感と何とも言えない気持ちが交差して、彼女を直視する事が出来なかった。
とにかくこのままではいけないと思い、ワシが羽織っていた雨よけを掛けてやる。
血の匂いがし、彼女の手足を見ると繋がれていたせいか、縄がくい込み、痣と出血で痛々しい姿だった。
それよりも、太腿が酷く、小刀が刺さったままだ。
それが幸いしたのか、出血は最小限に抑えられていた。
しかし、その小刀を見ると錆や汚れが付着し、このままでは不味いと思い、彼女を抱き上げそのまま大阪城へと連れて行った。
彼女は絶えず、呟いていて居た堪れない気持ちになった。
「みつ…なり…さ、わた…を、こ…ろ、して…」
ワシは彼女を守る様に、抱き抱え城へと向かった。
そして、疑問が幾つか浮かび上がる。
この甘い匂い。
これは彼女からだろうか。
何度も理性を失いそうになる。
彼女は一体何者なのか。
そして、三成達に彼女が無事な事を伝えた。
" 無事 " だと言う事だけを…。