第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
【降り頻る雨】
もう、どれくらい馬に揺られたのだろう。
もう、どれくらいの時が過ぎたのだろう。
所々、馬と私の休息を取り、大阪城へと向かう。
また、暫く走っていると私の頬に冷たい物が当たった。
「三成さん…」
雨が、と伝えると三成さんは頷き、後ろの刑部さんに叫ぶ。
「まだ本降りまで時間がある」
刑部!行ける所まで行くぞっ!
それに対して刑部さんは相、わかった。
そう言いうと、二人は速度を上げた。
その時、私と三成さんは何かを感じ取り、私をキツく抱き寄せて叫んだ。
「伏せろっ!刑部!!」
叫んだと同時に三成さんが私を腕で包み込む。
「私にしがみついていろ!」
私は何が何だか分からず、とにかく三成さんに言われた通りにしがみついた。
その瞬間、馬が甲高く鳴き、もがき苦しむ様に滑り込みながら倒れた。
どうやら何者かが馬に矢を放ったようだ。
その拍子に私と三成さんは馬から振り落とされてしまう。
三成さんが庇ってくれたお陰か、衝撃は凄かったが、傷は負わなかった。
「大丈夫か、名前!」
怪我はないかと気遣ってくれる。
私は三成さんは、と聞き返すと問題ないと言い安堵の溜息を漏らした。
「三成、ちとマズイ事になったナァ…」
少し遅れて刑部さんが辿り着き、三成さんに話し掛けた。
「一体、何が起きた、の…」
私が三成さんに抱かれたまま呟くと彼はこう応えた。
「囲まれた」
刑部さん曰く、山賊か何らかの残党だろうとそう教えてくれた。
「それじゃあ、私達は…」
どうしたら良い、と私は三成さんと刑部さんの顔色を窺う。
「ヒッ。大事無い、と言いたい所だが…」
ちと、数が多くてなァ、と刑部さんは三成さんの顔色を窺いながら答えた。
「問題あるまい…」
私が斬滅すれば善い事!!
三成さんは私を目立たない所に隠し、雄叫びを上げ私の存在を散らす様に、敵の群れに向かって行った。
「やれ、血の気の盛んな事」
ヒナギクはそこでゆるりと見物しやれ、と刑部さんも三成さんの後に続いた。
私は二人の後ろ姿を見送った。
お願い…無事でいて!
私はただ、祈る事しかできなかった。