第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
どうしてこうなった…。
「此処は、何処…?」
私は誰?
何てベタな台詞。
だけど、現在私に置かれている状況からしてみればこんなベタな台詞もしっくり来てしまうから不思議。
どんな状況かと言うと、私は普通に通勤途中で何処かのアニメよろしく、食パンではないけれど、近くのコンビニで手に入れた肉まんを齧りながら何時ものコースを歩いていた。
だけど、本当に一瞬の出来事。
気付いたら目の前には見渡す限りの海。
わぁ、綺麗。
来て良かった、何て言える余裕があったらどんなに良いことか。
「トリップ…?」
瞬間移動?
何でもトリップに結び付けるだなんてきっと夢小説の読み過ぎに違いない。
もし、仮にトリップだとすると私は死んでいる可能性が高い。
だけど、あの道は車が通る場所でも無いし、崖がある訳でも無いから死ぬ事はまず無いと言い切れる。
「まさか、アレが原因で…」
んな馬鹿な話があってたまるか。
日差しが気持ち良くてあの毛利元就公の真似を…
「日輪か、コノヤロー…」
私は広がる海と太陽に向かい、暴言と共に溜息を吐く。それと同時に背後から砂を踏み締める様な音が聞こえて来た。
「え、誰…?」
思わず勢い良く振り向くと私の目と鼻の先に信じられないモノを見てしまった。
タダでさえ、この現況が理解出来ていないのに、更に追い討ちをかける様な事が直ぐ目の前で起こった。
「貴様は…」
そう言ったその人に対して一歩、二歩と後ずさる私。
それはあの世界の中だけであって、存在しない筈。
震える手を握り締めながらその人から間合いを取り、今の状況を頭の中で考える。
だけど、余りにも突然で追い付かない。
「貴様…忍か」
そう言葉を続けるも、私は忍でも何でもないし、答えるにも声が出ない。
「もう一度、問う」
どうやら私は
「貴様は、何者ぞ」
戦国BASARAの世界へとトリップしてしまったようだ。
しかも、あの毛利元就公の所へ…。
あ、錆び確定だわ…。