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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第7章 無意味なひと


「裏の連中が私を狙ってる?」

ダージリンティーを片手に私はそう言った。

「今に始まったことではないわ。誰だって私の首を狙いにきてるもの」

セバスチャンはそういうことを言いたい訳ではない、という顔をして私に向き直った。

「ええ、どうやらお嬢様の首に懸賞金がかかっているらしいです。額までは分かり兼ねましたが…相当な額だと」

私は小首を傾げた。懸賞金?馬鹿馬鹿しい。私の首を取れる訳がない。
ダージリンティーの香りがふんわりと口に広がり、心なしか小鳥のさえずりさえ聞こえる気がした。

「私もこの程度のことなら改まってお伝えしませんよ。問題は懸賞金をかけたのは女王陛下だと言うことです」

「はあ?!」

思わず大きい声が出た。焦る気持ちでコップを叩きつけるようにしてソーサーに置き、足を組み替えると人差し指をセバスチャンに向けた。

「その情報は確かなの?」

「ええ。こちらの手紙をご覧下さい」

セバスチャンが差し出したのは白い封筒の手紙だった。裏向けると確かに赤の英国王室の印籠で手紙の封が閉じられていた。
信じがたいが、目ほど頼れるものはない。ペーパーナイフで封筒を破り、手紙を開くとそこには黒色のインクで書かれた筆記体があった。
下の方にはbyエリザベスと書かれている。

「…これ、なにか違和感を感じるわ。本当に女王から?」

机の引き出しの引き手を自分の方へと引き寄せて中から女王陛下の手紙を取り出す。それを広げて今回もらった手紙を横に置いて見比べてみる。

「ほら、女王陛下はいつもbyのyを長めにお書きになるクセがあるの。この手紙は短いわ」

「ふむ…」

セバスチャンが私の顔の左側にぐいっと顔を寄せる。もちろん、手紙を見るためなのだが、鼓動が速くなる。

「確かに。なにか違う人が書いた気配がありますね…私のカンでは若い女性ですかね」

パッと顔をあげてセバスチャンが私に言う。少し本領発揮したのか目が赤くなっていた。
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