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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第8章 私が髪を切る理由(幸村)


「幸村?」

不安そうに歩みを止めた幸村を愛が呼ぶ。

その声に、漸く振り向くと幸村は思いっきり愛を抱きしめた。
その拍子に持っていた荷物がドサっと落ちる。

「ゆ…ゆきむら…どうしたの…」

愛の言葉が届いているのかいないのか、
幸村は抱きしめていた腕にもっと力を込める。

『すげー逢いたかった…』

苦しそうに言葉を絞り出した幸村に、愛は驚いて目を丸くする。

「ほんとう…?」

『ったりめーだろ。なのに、佐助は何回も逢いに行くし、
お前は秀吉と仲よさそうに相合傘してるし…』

愛の身体がビクッと震える。

「み、見てたの?」

『見られちゃ不味かったのかよ…』

少し腕の力が緩む。
愛がこの後なんと言うのかが不安でならない。

「ううん。見られても平気だよ。
秀吉さんは、私のお兄ちゃんだから…」

『どういう事だよ』

よくわからない、という顔をする幸村に、
愛は腕の中で顔を見上げて、ゆっくり説明する。

「私の本当のお兄ちゃんは、もう永遠に逢えないけど…
でも、秀吉さんの話し方や、仕草や、私をすぐ甘やかすところが
びっくりするくらいソックリでね…」

そう言うと、愛は幸村の胸に身体を預ける。

幸村は、そっと愛の髪を撫でながら言う。
『ごめんな。愛が永遠に逢えなくなったのは、俺のせいだな…』

愛は幸村の胸に顔を擦るようにして、
首を左右に振った。

「違うの」

その声は、微かに震えて掠れていた。
だが、顔を上げようとしない愛の表情は幸村にはわからない。

「お兄ちゃんと永遠に逢えないのは、私のせい…。
私のせいで、お兄ちゃんは死んじゃったから…」

泣くのを堪えているのは、顔を見なくてもわかる。
幸村は、これ以上愛が辛くなる必要はないと思った。
幼馴染の佐助に聞けば、真相はわかるだろう。
今は、愛を悲しみに暮れさせてる時ではない。


『そっか。じゃあ、お前…
まだ、俺の事、好きか?』

急な質問に、ビックリした愛は、
堪らず顔を上げた。

「どういう事?なんでそんな事訊くの?」

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