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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第8章 私が髪を切る理由(幸村)


「秀吉さんにはいっぱいお世話になっちゃったな…」

自室に戻った愛は、反物を広げながら独り言を言う。
丁寧に一つずつ確認して行く愛は、
男物の臙脂色の反物を広げ、目を細めた。

「幸村、喜んでくれるといいな」

そう言うと、生地を優しく撫でる。
それは、最愛の人に触れるような優しい手つきだった。


カタカタカタ…

天井から物音がすると、愛は慣れたように佐助が降りてくる場所を空ける。

「佐助くん、どうしたの?連日お暇なの?」
そう言うと、昨日も訪れていた佐助に驚いたように言う。

『やぁ、愛さん。今日は買い物に行ってたの?』

「うん。秀吉さんがお休みで、付き合ってくれたの」
嬉しそうに愛が報告する。

『愛さんと秀吉さんは、まるで兄弟のようだね』

そう佐助が言うと、少しだけ寂しそうな顔をした愛が、

「本当はそんな風に甘えちゃいけないと思うんだけどね…。
どうしても、重ねちゃう。ああやって甘えさせてくれるのが、そっくりだから」

と、佐助の言葉に応えた。

「それはそうと、何か用があったんじゃないの?」

気を取り直したように愛が言う。

『あぁ、そうなんだ。
ねぇ、愛さんは、幸村のこと何にも聞かないけど、
逢いたくないの?』

「え?」

驚いたように愛が言う。

「それは逢いたいよ!でも…幸村が安土にいるのは仕事でしょ。
秀吉さんに甘えるようには、我儘言えないよ…
天気が良くなったら、また城下にお店出すんでしょ?」

『なら良かった。
でも、雨は数日止まないと思うんだ。そんな曖昧な…』

「いいの」

佐助の言葉を遮って愛が強めの声を出す。

『愛さん?』

「正直な事を言うと、
私だけが逢いたいんじゃないかって思って少し怖くなるの。
佐助くんはこうやって逢いにきてくれるけど、
いつも私が城下に出向く事しかできないでしょ。
毎回、幸村が心変わりしてたらって逢うのが怖いんだ」

自分の着物をギュッと握って、
今にも泣き出してしまいそうになるのを必死に堪える。

『安心して。
幸村より俺が愛さんに先に逢いにきたことがバレて、
物凄く怒られたから…』

愛はホッとしたように握っていた手を緩める。
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