第6章 6:つうほうのはなし
「そーね、前衛と後衛でゆるくペア。
カバーしながら各自のお仕事頼んだ。都度連絡する。
足が速いのは優先して潰して、
残ったのは囲んで殴ろう」
世間話のように、主は淡々と方策を述べる。
今の主は、お世辞にも性格がいいわけではない。
決して善良な人間でもない。
むしろ悪辣この上なく、欲深く、
一度決めればどこまでも冷徹になれる女だ。
……だからこそ、信頼に足る強さがあった。
黙って策に身を預けられる確信があった。
今の主とは対極に位置するような、
無欲で不幸な身の上で、
刀剣のために生きようとする審神者候補を――
――主に、彼/彼女たちの刀剣を屠るために、
数多く目にしてきたが。
つまるところ、戦いとは欲である。
生きたいと願う方が勝つ。
明日に勝ち得たいものを持つ者が、生き残ろうとする。
無欲と強欲、幸福を知らぬものと知るもの、
奇跡が与えられるのを待つものと、
確実な機会を自ら奪いに行くもの。
どちらが戦場で生き残るかなど、自明だ。