• テキストサイズ

【ハイキュー】ウシワカイモウト第三部

第9章 ・若利のやってみた


またも発端は天童覚である。

「こういう具合でいいのか、天童。」
「イイヨイイヨ、のっけからいい感じじゃん若利クーン。」

白鳥沢学園高校男子バレーボール部が普段練習している体育館にてノリノリの声色、満面の笑み、手にはカメラアプリを起動したスマホを持つ天童覚と天童の持つスマホに向かってカメラ目線―勿論無自覚―の主将、牛島若利がいた。
もし彼らをよく知っている連中が見れば嫌な予感しかしなかっただろう。

「よぉし、じゃもっぺんミュージックスタートぉっ。」
「わかった。」

言われるがままに自分のスマホを操作する若利、ご丁寧にも傍らに設置されたワイヤレスタイプのポータブルスピーカーからプツッという音が微かに響く。
ほんの少しの間を置いて軽快な音楽が流れ始め、そして次の瞬間にはスマホを危なくない所にどけた牛島若利が踊り始めていた。


一体何事かと言えば天童が前日に寮で動画サイトを見ていたのが原因である。
天童曰くチームで動画を作成・投稿している連中の動画でメンバー全員が音楽をかけられると突然踊り出すという企画のものを見ていたという。それがとてもツボに入って面白かったらしくそこから急にふと我らが主将に踊らせるのはどうかと思いついたとの事だ。
この場に瀬見英太あたりがいれば思いつくな実行するな若利も了承すなと突っ込むところであろうが生憎突っ込む奴がいなかった。
そしてバレーボール以外には疎(うと)い牛島若利は天童にやってみてヨと頼まれてそのまま了承してしまったのだ。

そういう訳で只今練習が終わって殆どの部員はいなくなった体育館で牛島若利の巨体がわりと軽快に踊っているという前代未聞といえる光景が展開されている。

「若利クンてカンいいねぇ。才能ありってカンジ。」
「そうか。」
「いっそのことダンスやる。」
「いや。」
「あそ。」
「ところで撮影は。」
「一応撮れたよん、ほら。」
「ここの動きが良くないようだ。そういえばひっかかった感覚があった。」
「ダネー。もっぺん撮る。」

疑問形で言う天童に若利はいや、と答える。

「もう遅い。文緒が待っている。」

若利は当たり前に言っている訳だが天童はブッと吹き出した。

「何何ー、文緒ちゃんに帰りが遅いって怒られんの。」

冗談めかして言われた事に若利はまたもいや、と真面目に返す。
/ 96ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp