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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第7章 君が唄うラブソング ※【月島蛍】



近づいていけば、挙動不審な影の主はようやくこちらに気がつく。

「おーい!蛍!奈々子ちゃーん!」

「明光くーん!」

僕を置いて走り出したかと思えば、奈々子さんは兄ちゃんと二人してキャピキャピはしゃいでる。

「やっと来たか!おーい婆さん!蛍が嫁連れてきたぞー!」

「あらあら、蛍ちゃんが?」

野次馬…?
何で近所のじいちゃん、ばあちゃんまで出て来てんのさ…。


「やだぁ、嫁だなんて…!」

「田舎だからね。彼女イコール嫁、になるんだよね」

両手を頬に当て、わかりやすく照れている奈々子さん。


その様子を眺めつつ、ポンと頭に手を乗せる。



「まあ、いつか、そのうち。
ホントに嫁に来れば?」



「……」



…あ、珍しい。
赤面して固まっちゃった。



微動だにせず、何か言いたげに僕を見上げる瞳。
感情表現豊かな奈々子さんがこうなってしまう姿も、実は好きだったりする。







恋って不思議だ。
想いの行き場を失くして心が潰れそうになったとしても、人はまた恋をする。
失恋の傷はきっと、たった一人の誰かと巡り会うために用意された痛み。


痛みの向こう側には、君がいた。


奈々子さん。
あの夜、僕を見つけてくれてありがとう。
幸せが何なのかを教えてくれて、ありがとう。

…なんて、まだまだ素直に言える僕じゃないから。
これから続く長い人生のどこかで、きっと伝えようと思う。

それまで、待っててよね?





「行くよ、奈々子」


まだ赤く染まったままの頬っぺたをムニッと摘まめば、その表情はみるみる綻んでいく。


いつも隣には、僕の好きな君の笑顔。


初雪の日に二人語った未来を、
僕たちは今、なぞり始めている。






【 end 】


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