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【ONE PIECE】 淡く、儚い、モノガタリ 【ロー】

第2章 別離。


「さっさとあの男のところに行け…ッ、!!」
「…………、」


彼は一度も口を、開かない。

ただ、表情を「無」にして、私の暴言を聞いているだけだ。
荒々しかった影は、いつの間にか、落ち着きを取り戻していた。
「赤色」だった視界も、「鮮やかさ」を取り戻している。
私は耳を塞いだまま、肩で呼吸をし、荒い息を整えた。
冷静な思考も働き始め、だんだんと、後悔の波が押し寄せる。


「…ろぉ───────、…ぁ゛、…かは…ッ、!!?」
「……シェリル…、??」

左脇腹に、ひどい激痛が走った。

頭を床に打ちつけ、脇腹を抱え、床に倒れ込む。
そんな私を見て、ローは一瞬で、ゾッ、としたような表情になった。
すぐさま私に駆け寄り、左の脇腹に手を伸ばす。
けど、脇腹に伸びる、その手を、手首を…、私は掴んで遮った。


「さ…触ら…ない、で…っ、見ない、で、あっちに…行ってっ!!」


激痛に、顔を歪めながら。

真っ青な顔をし、私は、彼の手を力強く、押し返した。
その瞬間…、脇腹から、首筋まで突き抜ける痛みが走る。
窓ガラスに映っている…自分の姿を見て、呆然とした…。




首筋まで、迫っている黒い痣。
また…、首筋の血管は、限界まで浮き上がっている。
すでに頬まで、侵蝕が迫っている様子。




自分でも、ゾッとした。

けれど私は、平常心を装い、ローの胸元を押して、彼を拒否する。
俯いたまま、静かに、大丈夫だから、と呟いた。
すると、彼は私の首に片手で掴みかかり、床に押し付けた。
かは……っ、と喉から吐き出される声。





グダグダ、うるせぇ……、

いつもよりも、低く、優しくない声だった。
自分に向けられているのは、優しさではなく、僅かな、怒りと殺気だった。
ぐぐ……っ、と首に力が込められ、私は足掻く。








「少しは……、 黙ってろ」







初めて、優しかったローが豹変した。







―それが本音じゃないことくらい、分かってるさ…、―
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