第13章 ボディーガード
数回のコールで、電話に出た社長。
『おーぅ!どうしたー?』
何やら、気分良く酔っ払っていた。
「どうした、じゃないですよ。ボディーガードって、どういう事ですか?」
『あ、黒尾ちゃんそっち行った?イイ男だべ?惚れんなよ?』
社長の言っている事は、酔っ払っていて回答になっていない。
でも、1つ確定した事はあった。
ボディーガードと言って、すぐにこの人の名前が出たという事は、間違いなく依頼はしているらしい。
「何でボディーガードなんか…。」
『今日の放送、結構反響あったんだぜー。事務所に連絡来たりさー。』
成程、それで気分良く酔っ払っているんだ。
いや、そこじゃない。
納得すべきは、それじゃない。
「別にボディーガードなんか、つける程の事じゃないんじゃないですか?」
『お前さ、テレビの力、ナメんなよ?事務所に連絡くるぐれーって、どーゆー事か分かんねー?』
「分からないです。」
『そんだけ、お前は今有名人ってコト。それなのに、力ちゃん置いて歩いて帰るとか、何してんの?』
一瞬だけ、真剣になった社長の声。
少し、怒っているような気がする。
『まー、そーゆーコトで。ちょーっとオシオキがてら、脅してやって自己紹介しろって話しといたんだよ。面白かったろ?』
また、ふざけた口調に戻って、出てきたのは暴露話。
確かに、少しだけど怖い思いはした。
顔がテレビに出るというのは、そういう事なのだと深く胸に刻む。
無防備だった私が悪いと分かった。