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月夜に詠えば

第9章 渾然一体


雅が泣き終える頃、家康が政宗の御殿にやってきた。

「政宗さん何したの?」

家康の瞳が鋭く政宗を射貫く。
政宗の前でその瞳を潤ませ赤くなっている雅を見た家康からは殺気が立った。

「なんもしちゃいない。雅が肩ひじ張りっぱなしだからほぐしてやっただけだよ。」
軽い笑みで政宗はかわす。

「ち、違うの家康さん!
私、昨日から悩みがあってうまく対処できなくて…
それで皆に迷惑かけちゃって。政宗が励ましてくれたら
なんか急に胸のつかえが軽くなってつい。」

目元を拭いながら雅は慌てて否定する。

「ふーん。ま、誰だって悩むことくらいあるんじゃない?
あんたほど顔や態度に出る人もそうそういないけど。

ただ、あんたが暗いと調子狂うってのは事実かな。」

いつもの素っ気無いけどどこか温かみのある家康らしい言葉。

「ごめんなさい。」
着物をきゅっと掴んで伏し目がちに謝る雅。

「そんな顔してちゃもったいねーよ。
準備してくるから雅も家康もんまいもん食ってけ、な?」

明るい声で政宗がその場を立ち、昼餉の支度にとりかかるべく私室を出て行く。

取り残された家康と雅。

政宗が戻ってくるまでの間雅は家康の不器用ながらも優しい言葉をかけられ、心が軽くなったのだった。


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三人で昼餉を囲み政宗の御殿で食べる。
滅多にない光景で違和感があるが居心地は悪くなかった。

「政宗ってほんと料理上手だよね。。」

政宗の料理に舌鼓を打ち、雅は感嘆の声を上げる。
先程までの元気のなさは幾分軽くなり明るさが見えた。

「安定している。」
家康も食事を口に運びながら褒める。

「だったらもっと食ってけ。腹が減っては何事も力は出せねぇからな。」
誇らしげな政宗も次々と膳の上を綺麗に平らげてく。

雅はこうやって何気ない会話をしながら食事をすることに愛おしさを感じていた。

「あ、あのね。二人に、
皆に相談していいか悩んでいたんだけど…聞いてくれる?」

勇気を出して二人に雅は問いかける。

一瞬驚きで目を見開いたがすぐ二人は穏やかな笑みで答える。
「あぁ。」
「どうぞ。」



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